【仮想通貨と確定申告】その7 棚卸の重要性
今回も、ちょっと脱線。
なかなか先に進まなくてイライラする方、記帳方法だけ知りたい方は今回は飛ばしても大丈夫です。棚卸について解説しますので、すでに詳しい方も飛ばしてください。
前回「最終仕入原価法」の解説の時にチラッと書いた、
在庫金額が高く見積もられると、税金が高くなってしまう!
の仕組みについて書いておこうと思います。
仮想通貨取引には直接関係ない部分でもあるので、記事が長くなるのを避けるために省きましたが、税金計算の肝となる部分なので、知っておくときっと何かの役に立ちますよ。
棚卸とは?
利益を知る為に、商売ではまず粗利を計算しました。
粗利(売上総利益)= 売上高 ー 売上原価
この粗利の計算の為には売上高と、売上原価が必要です。
売上高は、商品の販売価格の1年間の累計ですから計算は簡単。
問題は売上原価。つまり取得原価です。
その売上原価の計算方法は、
売上原価 = 期首在庫 + 1年間の仕入合計 - 期末在庫
です。
式からわかるように、売上原価の計算には、3つの数字が必要です。
- 期首在庫
- 1年間の仕入合計
- 期末在庫
一番簡単なのは、1年間の仕入合計。1年でいくら仕入れたのか累計するだけ。
そして期末在庫ですが、これは棚卸をすることによって求めます。
棚卸とは、店を締め切って期末の在庫をひたすら数えること!販売業の経験がある方ならわかりますよね。あのテンション下がるやつです。超めんどくさい。
でもこれをやらないと期末在庫がわかりません。
一生懸命数えた棚卸数量に、仕入れ単価を掛け合わせて期末在庫を求めます。
期末在庫 = 棚卸数量 × 仕入れ単価
そして最後に期首在庫ですが、これは前期の期末在庫そのままです。なので特に計算不要。
販売業はこうやって売上原価を計算して、これを売上から引くことで、粗利を求めているんです。
では、例題行ってみましょうか。
くだもの屋さん、決算を迎えました。
1年間の売上合計:1000万円
期首在庫:100万円
1年間の仕入合計:700万円
期末在庫:200万円
さて、今年の利益(粗利)はおいくら?
式に代入してみましょう。まずは売上原価を求めます。
売上原価 = 期首在庫 + 1年間の仕入合計 - 期末在庫
ですから、
売上原価 = 100万円 + 700万円 - 200万円
です。つまり売上原価は600万円。
言い換えれば、今年の売上1000万円のもとになった仕入れ価格は600万円だったということです。
1年間の仕入合計をそのまま売上から引くことができない理由はお分かりですよね。そう、未販売の在庫の仕入価格も含まれているからです。未販売の在庫の仕入れ価格とはすなわち期末在庫ですね。なので、棚卸をして期末在庫を求めるんですね。
そして、1年間で販売するのは、その年に仕入た在庫だけでなくて、前年までに仕入ていた在庫も含まれています。なので、期首在庫を加えているんですね。
そして利益(粗利)は、
粗利(売上総利益)= 売上高 ー 売上原価
ですから、
粗利(売上総利益)= 1000万円 ー 600万円
はい、正解は400万円でした。
本題です
今回の検証テーマは、
在庫金額が高く見積もられると、税金が高くなってしまう!
でしたね。
売上原価を求める式をもう一度見てみましょう。
売上原価 = 期首在庫 + 1年間の仕入合計 - 期末在庫
ということは、期末在庫の値を大きくすると、売上原価の値は小さくなります。
もうお分かりですよね。くどいようですが利益(粗利)は、
粗利(売上総利益)= 売上高 ー 売上原価
なので、売上原価の値が小さければ、粗利は大きくなります。
つまり、利益が増えた!
わーい!もうかったもうかった!
。。。?
んなわけないっしょー!
利益が増えたっていうのはあくまで計算上の話。計算上の利益が増えたって、手元の現金は1円も増えていません。
なのに利益が多く見積もられたってことは、税金が高くなってしまうってこと。税金は利益に対して税率をかけて求めますからね。
そのため先日解説した、「最終仕入原価法」などの方法で、適正価格よりも仕入れ単価が高く評価されると、期末在庫が高くなって、ひいてはその年の税金が高くなってしまうんです。
現金は多くないのに、税金が多いと大変ですよ。税金払うためにガチホしたいポジションを泣く泣く売らなくてはならない。そんなこともあるかもしれません。
しかし丸損というわけではありません。その年の税金が高くなっても、翌年は税金が安くなります。これも式を見ればわかりますよね。期末在庫は次の年の期首在庫になります。期首在庫の値が大きくなれば、税金は安くなりますよね。税金計算の仕組みって、ほんとよく考えられています。
今回のまとめ
棚卸って超めんどくさい。
あー、来月また棚卸だよ(泣)
こないだやったばっかなのに、っていっつも思う。でも毎回ちゃんと半年経ってるんですよね。
仮想通貨は取引口座やウォレットの残高を見れば在庫がわかるので、棚卸不要。つくづく魅力的。
次回に続きます。